あの日食べた”赤いあいつ”の味を私は忘れない。
ナス入りパスタの話の続きとなるのだが。
そのパスタには謎の食べ物が絡まれていた。
それがこれ。
「赤くて丸い」輪っか状の具。
唐辛子のようにも見える。
めちゃくちゃ辛そうだ。
上司に「食べてみて」と言われた。
悪だくみを考えている少年のような顔で。
再びナスを食べるときの葛藤が襲ってきた。
なんなんだこれは?
「ポテコ」のような具は、早く食えよ!と言わんばかりに
皿の上で圧倒的なオーラを放っている。
そう、それは借金を取り立てに来た強面の男が家のドアの前でずっと待っているように。
しかし、もう自分はナスを乗り越えて成長したのだ。
進化した自分を見せつけるようにその「赤くて丸い」輪っか状の具を口に一気に放り込んだ。
…
…
予想していた辛さはやってこなかった。
その代わりに”旨味の大波”だけが押し寄せてきた。
見た目と味のギャップがあって余計に美味しく感じた。
借金を取りに来たと思われた強面の男が実は
家で飼っていた犬が気になって「おたくのわんちゃん可愛いですね」と、
ただ仲良くなりたかっただけの男だったという衝撃にも似ている。(長いわ!)
具の正体はもうどうでもよかった。
次の瞬間、ひこまろもびっくりのセリフが飛び出しそうになったが
恥ずかしいので心の中だけで叫んだ。
「まるで旨味の大漁祭りや~~~!」
・・・・・・・
普通に美味しかったという話です。
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